不動産登記の半ライン申請がいよいよ今月中にも開始されます。
半ラインと言うのはオンライン申請に対する造語です。
法務局の方はもうすでにオンライン申請の受付体制はできているのですが、肝心の添付情報が電子化されていません。
どういう事かと言いますと、オンライン申請するためには、登記申請書に添付するものをすべて電子情報に変換しなければなりません。ところが、登記申請に必要な“契約書・権利証・登記委任状・住民票・印鑑証明書”のどれもが今はまだ紙ベースのものでしか存在せず、オンライン申請をしたくてもできない状況にあるんですね。
これらの添付情報が100%電子化されるにはまだまだ先になりそうです。
たとえば
住民票・・・住基ネットそのものが自治体によっては機能していません。
また
権利証・・・これについても同様で、今の制度下では現在紙ベースの権利証は相続か売却でも起こらない限り、電子情報化されません。
政府が強制的にこれらを電子情報化し、その識別情報を本人に送り付けるといった荒技でも使えば不可能ではない話ですが、プライバシーとか予算といった現実的な問題がネックになって実現は難しいと思われます。
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特許申請の場合はオンライン申請を実施してみたけれども利用率があまりに低かったので構想そのものを取りやめたとか。。
税務申告もオンライン申請すると手元に何も残りません。融資申し込みの際、資料として金融機関から過去三年分の確定申告の写しの提出を求められたりしたら困りますよね。
裁判所の訴訟現場では未だにFAX通信がメインです。
登記実務も、『やっぱ半ラインはやーめた!』・・・なんてことにはならないでしょうねー。
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大阪法務局本庁で登記簿のコンピューター化移行作業が始まったのは平成2年からです。あれから17年経過してやっと大阪府内のすべての法務局の登記簿が冊子からコンピューターへの移行作業が完了したばかり。
公図や測量図面のコンピューター化については移行措置はやっと始まったばかり。
こちらも登記簿情報だけがオンラインで見れるとしても、公図や測量図面がオンラインで見れませんので結局のところ当分は郵便申請するか直接行くしかありません。
今は未だその過渡期と言えます。(長い過渡期だこと。。。)
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オンライン申請構想ももうここまで来てしまったら将棋の歩みたいなもの。前に進むしかありません。
そこで出て来たのがこの半ライン申請です。
これは要するに登記申請書とPDF化した登記原因証明情報をオンラインで送り、その他の添付資料は後日郵送で受け付けるというものです。
インセンティブとして半ライン申請した場合には、5000円を上限に登録免許税が軽減されるそうです。但し、今は未だ所有権移転登記と担保設定登記だけに限定されるようですが。
まあ理屈はなんであれ、とにかくオンラインの稼働率を高めることがまずありき・・・という話のようなんですねー。
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電子申請ツールを持たない一般市民は蚊帳の外です。
司法書士も正直混乱しています。
なんせ我々司法書士の脳細胞は文科系なものでできていますので元々コンピューターは苦手です。
オンライン申請のためには、好き嫌い関係なく難しいソフトファイルをダウンロードしたり、IDやパスワードを管理したり、ICカードリーダーを購入したりという頭がパンクしそうになる修羅場をくぐらなければならないんですよね。
職業柄どうしても必要なものならやらざるを得ませんものねー。
これまでにも司法書士が実務をこなしていく上でパソコンにどうしても必要なオンラインシステムというのはいくつかありました。
代表的なのは次のようなものです。
①電子定款認証
②電子内容証明
③登記情報システム
④住宅地図情報
⑤デル・アスクル・カウネット・アマゾン等
これらをパソコンで機能させるために、何度わずらわしいソフトファイルをダウンロードし、IDやパスワードを管理しなきゃならなくなったことでしょう。(パスワードはともかく、IDなんかとっくに分からなくなっているのもあります。)
しかも半ライン申請の場合は、これらに加えてICカードリーダーも購入しないといけないらしいのです。
なんだそれは?という世界の話です。
自慢じゃありませんが、私は自宅にあるビデオ録画すらしたことがありません。しかも最近のテレビはハードディスクが内蔵されていて、DVDひとつ見ようにもリモコン操作が分からず小学生の息子にやってもらう有り様。。。
話題がずいぶんそれましたが。。。
しかも登記申請を半ライン申請にすると、今度は、補正はメールでのみやり取りしないといけないだの、電子納付した登録免許税の再使用はダメだの、代理人を異にする連件申請が当分ムリだのと、何かと細部が煮詰まっていませんので利用する側からすればとてもコワくって利用する気になれないというのが本音です。
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物事というのは簡単になってこそ利用価値が出るというものです。
これを便利と言うんですよね。
進化と言うのは煩わしさからの開放・・なはず。
それがかえって煩瑣になるなんて皮肉な話ですよねー。
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半ライン申請のメリット
①法務局に出頭する必要がなくなります。
②手続きは全部ネットと郵送で足ります。
③登録免許税が最大5000円軽減されます。
・・・ということのようです。
これだけ聞けば良い事のように思えますよねー。
でも、
一般市民にとって登記申請に出向くなんてことは一生に何回もあるものではありません。しかも登記申請を本人自ら行うケースはきわめて少ないので法務局に行かなくて済むようになるというのはメリットと呼べるほどのものではないような気がします。
また司法書士にとっても、登記申請というのは司法書士資格者本人がわざわざ法務局に出頭するわけではなくて、普通は事務員さんに代行してもらってやっているのが実情です。なので司法書士にとってもメリットはあまり感じません。
登録免許税の軽減にしても、5000円そこいらぽっちの金額じゃー大したインセンティブにはならないんじゃないでしょうか。
大体、不動産を売買したり、担保設定をしたりするのは法人か住宅ローンが組める人ですので格別日々の生活に困っている人ではありません。
しかも、5000円のインセンティブと言っても、郵送料として書留配達記録で1000円の実費がかかって来ますからこれを差し引いたら実際のところ正確には4000円のお得にしかならないということです。
また、司法書士サイドからすれば、半ラインで登記申請をすることになればこれからは大きな顔をして、交通費に代わって、プロバイダー契約料や通信費にパソコンの購入費などを申請経費に上乗せできるということになります。
登録免許税が減額されることになってもこれらの電子機器に関わる諸経費が司法書士報酬に加算されてしまうわけですからトータルで結局はプラマイゼロのような。。。
何度も言いますが、減額されるのは所有権移転と担保設定登記だけですから。
その他の登記の場合は確実に報酬アップされた司法書士の登記費用が国民の肩にのしかかることになる・・・??
うーん。。。
つらいです。。。
さすがにこれ以上ホントのことを書くのは。。。
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もう一つ決定的に半ライン申請が登記実務の現場で使えない点
それは
“受領書の不発行”という点です。
これまでは法務局で登記申請すると受領書に受け付け印が押され、確かに登記申請を受領しましたという官庁のお墨付きがもらえたわけです。
これを金融機関にFAXすると融資実行と相成ったわけです。
ところが、これからは半ライン申請をすると、担保設定登記であっても受領書が法務局から発行してもらえないということになります。
当然金融機関からは半ライン申請はダメですよと言われるに決まっています。
と言うことは、金融機関がらみの登記には半ライン申請は事実上使えなくなります。
政府としては、オンラインの画面を印字して司法書士が証明したもので代用すれば足りるじゃないか・・・との意見のようですが、我々の証明で金融機関が納得してくれるのならオンライン以前の時代からとっくにそうしていたでしょう。
どうも、この登記のオンライン制度や半ライン制度というのは、政府のお偉方が登記実務の現場をどこまで分かって構想されているのか怪しいですよねー。
この狭い日本でここまでしてIT化を促進しなければならないほどの必要性が本当にあるのかどうか。
マーケティング調査もそこそこに、とりあえずやってみるか・・・では国民が納得しないでしょう。
これらは登記利用者サイドだけの問題でなく、これから半ラインを受け付けることになる法務局サイドも相当混乱するのではないかと心配しています。
これまでの出頭主義というのは確かにアナログの最たるものでしたがアナログにはアナログの利点もなかなか捨てたものではありません。
ネット社会が到来しても新聞が無くならないように、出頭主義はこの先もなくなることはないのかもしれません。
これまでの星の数ほどもあるアナログ時代の登記先例は先人の努力と知恵の結晶です。
便利さやお手軽さだけを追求するあまり、これらの大半をある日突然時代錯誤な古いものとして闇に葬り去ることは何か大きなものを失うような気がしてなりません。