不動産登記で一番多いのが抵当権抹消登記です。
今年は、バブル全盛時から数えて20年目の節目に当たります。
当時20年ローンで住宅を購入された方には待ちに待った完済の日がやって来ます。
こころよりおめでとうございますと言わせていただきたいと思います。
さて
この抵当権抹消登記
これまで登記の中では一番簡単な部類に入っていました。(過去形ですよ!)
いわば不動産登記の入門版みたいな。。
なので
司法書士に依頼せずにご自分で済まされる方も多くおられました。
あ、だからと言って
『不動産登記なんて簡単だよ・・・』なーんて思わないでくださいね。
・・・
実は今登記の素人さんにとってはこの抵当権抹消登記の難易度が上がって来ています。
これまでみたいに法務局に行って、登記官上がりの一般の人相手専門の相談員の方に教えてもらいながら済ますというケースが少なくなって来たんじゃないでしょうか。
その理由
①銀行合併が相次いだため抵当権の合併移転登記が前提として必要になっている点
②登記原因証明情報の登場によりいい加減な解除証書では登記申請が却下されてしまうこともある点
なんです。
・・・
まず①についてですが、
抵当権の移転登記申請をするには民間銀行の場合には登録免許税として債権額の千分の1がかかります。
『ウチは完済しているから実際の債権額はゼロなんだから登録免許税もゼロのはずだー!』
なーんて駄々をこねてもダメですよー。
当初借入金額が2000万円の人は2万円の登録免許税。
同じく借入金額が3000万円の人は3万円の登録免許税
・・・が当然にかかります。
払わなきゃどうなるかと言うと、抵当権移転登記は却下され、抵当権抹消登記が永遠にできなくなるだけ・・です。
・・・
抵当権合併移転登記に要する費用負担はどうなるか?
この登録免許税は最終的には当該銀行が負担してはくれますが、後日振込みとなりますので、この間はとりあえずは自分で立て替えるしかありません。
ホントに立て替えた登録免許税が返って来るんだろうか・・・。
私たち司法書士も結構この手の立替えはするんですが、全く面識のない金融機関だったりすると結構不安になったりしますよね。
『なんでローンを完済したというのに余計な立替金がかかるんだ!』
とか
『なんで銀行が担保抹消費用くらいサービスしてくれないんだ!』
とか
言いたくなる気持ちも分からないでもありませんが、
なんと言ってもこればかりは仕方ないというしかありません。残念ながら。。。
逆に、たまに銀行の若い担当者が、ローン完済されたお客さんからクレームが付いて『お前のところが抹消費用を負担しろっ!』と言われて困っていると、真っ青になってウチに相談に来られたりしますけど。。
最初の抵当権設定契約書をよく読めば、どこの金融機関の契約書にも必ず小さな文字で『登記費用はすべて借主の負担とする』旨の約款が印刷されていますから最初から勝負はあったというものです。
・・・
そもそも抵当権設定登記と言うのは貸し出す金融機関のリスク保全のためのものなんですから、本来なら金融機関が負担して当然なんです。
ですが、
そこは力の強弱が働きます。
借りる側の立場からはお前のところが負担しろよ・・・なーんて言える筈がありませんものねー。
ということは、これとは反対に、抵当権を抹消する登記のメリットはこれは明らかに所有者側にありますから抹消登記費用は本人が負担すべきものだと言えます。
・・・
ちなみに
住宅金融公庫も今は名前が変わってしまい特別法によってこちらは非課税ですがやはり抹消登記の前提として抵当権移転登記をする必要があります。
・・・
ご自分でこれらの登記に挑戦なさるのもいいですが、下手して書面に誤記なんかした日には書面のもらい直しということにもなりかねません。
書面のもらい直しとなると、おそらく無料で対応してくれるだろうとは思いますが、中には手数料を請求するところもあるので注意してください。
特に資格証明は有効期限がありますからモタモタしていて期限が過ぎると資格証明のもらい直しとか、ひどい場合は代表者が交代していて委任状からもらい直しということにもなりかねません。
ローンが終わってからこんなことのお願いをしに金融機関に行くのも気が引けるでしょうし、また窓口はたいていは支店窓口でも処理してくれるでしょうけど、ローンセンター経由でと言われ、振り回されたりすることもあります。あまり良い応対は期待しない方が無難でしょう。
・・・
そして厄介なのが②の理由
一昔前までは申請書副本という便利な制度があって
解除証書や弁済証書なんかなくても銀行の委任状があれば担保抹消登記がやれたんです。
登記原因なんかはなんでもオーケー。
これが原因で誰も文句は言わなかったし。。
ところが
ところが
今や登記申請にはすべて登記原因証書の添付が義務付けられました。
で
何が厄介なのかと言うと、
この登記原因証明情報は公文書になりますからいい加減なことを書くと公文書偽造罪という非常に重い刑罰が科せられるからなんですね。
今までは抹消原因が解除だろうが弁済だろうが、多少実体関係と相違があっても、末梢さえできればオーケー、なんでもオーケーみたいな世界だったのですが、登記原因証明情報になると、より正確な抹消原因を確認する必要が出てきます。
なんで
こんなことを書くかと言うと、
従前の紙ベースの登記申請時代の書式をそのまま原因情報代わりにしている部署が未だに結構あるからなんです。
金融機関の中にも旧態然とした契約書を使っているところもありますよ。
ましてや
サラリーマン御用達の財形転貸融資なんかですと、以前はわりと大きな上場企業がよくやっていたのですが、最近はめったにやらなくなったせいもあって、依頼者が持参される書面を見ると、これはいったい何年前の解除証書???と思うような代物に遭遇したりします。
登記のプロとしてはいい加減な登記原因で登記申請もできませんものね。
財形転貸融資の場合、『保証契約による求償債権』を被担保債権とする抵当権が設定されます。
この場合の貸主というのは、これもまた財形融資と言ってもいろいろなタイプがあって、一概には言えないのですが、一番ポピュラーなのはやはり都市銀行でしょうか。
つまり、都銀から本人がローンを組み、所属会社が連帯保証をしているケースですね。
こんな場合、
会社の担当部署としては、会社が銀行から資金を借り受け、これを社員に貸し出し、ローン返済は、会社が社員の給料から天引きして都銀に返済していくわけですが、会社部署の人としては、会社が返済を受けているという感覚でおられる方が結構多いようです。
が、会社がやっているのはもっぱら社員さんの住宅ローンの保証業務に過ぎません。
この住宅ローンが完済されると、
抵当権抹消登記をするには、登記原因として『主債務消滅』と言う文言が記載された登記原因証明情報の作成が必要となります。
必要となりますというのは、これまでは弁済証書だとか解除証書だとかを使って、こんなケースでも割りといい加減に解除か放棄を登記原因にして抹消登記をやっていたのですが、よくよく考えてみれば、ローンが完済されれば、すなわち主たる債務が消滅してしまっているのですから抵当権が存続しているはずがありません。存続していないということは消滅してしまっている・・ということですから、この抵当権を今さら放棄も解除もないでしょう。ましてや、保証会社が弁済を受けたのではありませんから『弁済』を登記原因にするのはおかしいということになります。
抵当権の附従性という性質から抵当権は主債務の弁済によって当然に消滅しているはずなんですね。
ですので
消えてなくなった抵当権を今さら解除したり、放棄したりもないじゃないですか・・・ということです。
面倒くさいからと言ってこれを解除だとか放棄で登記してしまったりすると登記は通るけれども虚偽の登記申請ということにもなりかねません。
つまり財形転貸形式の住宅ローンを完済された場合の抹消登記原因としては主債務消滅・・・これしかないのです。
・・・
と、まあ大体この結論に至る経緯の趣旨は良く分かるのですが、
だからどうなるかと言うと、
お客さんが事務所に持参された原因書面に万一主債務消滅と言う文言が入っていなかったら、再度こちらにて登記原因証明情報を作成して債権者の捺印をもらいなおしていただかざるを得なくなるということになります。
しかも
財形融資の場合、『保証契約による求償債権』を被担保債権とする抵当権が一般的ですから、登記簿からは主種債務の債権者が誰なのか・・・というのは雲を掴むような話です。
その辺から事実聴取して登記原因証明情報の作成をし、債権者の捺印をいただかなくてはなりません。
またそれを作成したところで当該財形融資の窓口担当者になぜ従来の原因証書ではダメなのかを説明しなければ協力してもくれないでしょう。
せっかく住宅ローンとおさらばできるとルンルン気分のお客さんの気分を損ねさせるのには十分な問題ですよねー。
私だってこんなことやりたくないです。
でも
登記が通らない
真正な登記をするのが我々の職責だとしたらお客さんに嫌われても説明する義務はあるというところでしょうか。